――記録保管庫――
[赴任日から避けていた記録保管庫へ足を踏み入れる。
もうここを忌避する理由はなく、扉を閉めれば密室にもできるこの空間は便利なものであった。
ドロシーは、今日もそこにいただろう。
見張りが外にいるようならさりげなく扉を閉め、隣に付いているようならば、席を外すように頼む。去ってくれないようならば、それ以上の交渉はあきらめた。
何の用かとドロシーが切り出す前に、こちらから口を開く。]
気持ちはわかったか?
それとも、足りないか。
[飢えと渇きはまた襲ってくるだろうが、今は足りているだろう。
だがドロシーの知りたいこと>>14に足りたのかはわからない。
誰が聞いているかもわからないため、直接的な言葉は出さずにつかつかと近づき昨日より近いほどに距離を詰めて、小声で続ける。]
身辺に気を付けろ。
……全てからは守ってやれない。
[目撃情報をカスパル一人で網羅するのは不可能だ。
多くのものが周囲を疑い囁き合う。疑心は誰にでも向くから、誰かが正解にたどり着く可能性もある。]