[そして、死のうと思って動いたのに、たったあれだけの静止で手を止めてしまった自分に呆然としながら、ぼんやりとその男の顔を眺める。
すると、温和そうな顔がにこりと微笑んだ。
『"生きている"と、実感できたかい?』
そう問われ、ぽかんとした顔を晒しだろう。
ずるりと手から力が抜けて、カランカランとナイフが床に落ち……そこでようやく両手が震えていることに気付く。]
……だって、もう、――
どうしたらいいのか、……わからないの。
[目からぼたぼたと零れるのは熱い滴。
途方にくれた迷子のような顔をして、先生、に問うた。
状況が状況、軍に協力してくれている口の堅い先生と言うことで少女の情報が開示され。
納得したように、先生は頷く。
死ぬのは怖い。
でも生きてるのももっと怖い。
そう零す少女に、先生は、『正しく怖がる方法を教えてあげよう。』、そう言った。
それ以来、ウイルスやワクチンの開発、ガルーに関する情報、そういった知識を教えてくれている。
そんな出会いであったことは……勿論、目の前の教え子に、言えそうにもなかったけれど。]