彼女は、「御提案いただいた件、折り良い返事をお返ししたく」と書いてきた。
折り良い返事、と聞くだけで脈が早まるが──、実際のところ、
ブラバンドの無血開城が提示され、戦の趨勢の定まった今、超法規的に王府軍に戦力支援をするためにおれが彼女に打診した内容は、もはや適応できない。
そして、神殿に退いた彼女自身、すでに国政の実質的な担い手ではなく、共和国にとって国交交渉の相手ではない。
ゆえに、彼女から折り良い返事をもらっても受諾できない。
残念なことだが、その機会は過ぎてしまった。
[恬淡と説明するのは、外交官としての立場と見解だ。]
今、彼女のもつカードは、「宝珠」そして、彼女自身の「命」と「愛」のみ。