― マーチェス平原 ―
[まるで吹き荒ぶ嵐のようだ。
先陣で巨躯を奮うマーティンにはそのような形容が胸に浮かぶ。
いかなる備えがあっても、気迫で負ければ木っ端微塵に破壊される。
彼が獲物振るう度、地を伝う衝撃が届くほど。
敵としては恐ろしいの一言だが、自軍に在っては頼もしい。]
!? 待て、血気に逸るな!
行き過ぎだ、戻れッ…!! ……っ!!
[一方で、命中に勢い付いたか、向こう見ずな同胞が我彼の距離を見誤り吶喊し、敵の切り返しに直撃を受け地に落ちたのが見えた。
体勢を立て直す隙を作るべく即座に矢を番え弦を引き絞り放つが、敵も動く。
仕損じた後では遅い、一人は射抜けても二人は間に合わない。]