[ややあってトールから、彼の症状名を打ち明けられる>1:515]
突発性難聴は珍しい症状ではないが、高難度の症状と治療および聴力予後の不良性を聴けば、医師の表情が険しくなる]
本人が症状と予後を把握しているようなので。
完治しないという言葉に、僅かに頷き。
医者として、改善の可能性だけは消さぬ響きの返事を返した。
他星系の医療技術や新薬の開発…希望は常にゼロではない。
……音楽家か! それは…。
[よりによって…と胸奥が痛むのを眉を寄せて堪える。
音を…響きを愛し生み出す人間にとっては、何より辛いだろう病だ。
かつて地球には、聴力を失っても、
心に響く音だけで素晴らしい音楽を生み出した音楽家もいたが…。
それでも音楽が好きだからと云うトールの、柔らかな強さに。
視線をまっすぐ見つめ返し、そうか、と頷いた]