[ それからいくらも経たぬうちに、モルトガット帝国の皇帝が病没し、若き皇太子が新皇帝となった。
その報を伝える新聞の写りの悪い写真の中に、忘れ得ぬ印象を残した瞳を見つけた時、息を飲むような心地と共に、再び彼と対峙する時が来るのではないかという予感めいたものを男は確かに感じていた ]
歌で沈まぬ太陽を沈められるものなら、試してみたい気もするが…いや、失礼した。
ウルケル海軍総司令ヒューベンタール提督の副官として貴殿に用件を伺いたい。承るのは、俺で構わないだろうか?
[ やがて最初の非公式の言葉から、公式のそれへと態度を改め、男はそう問いを投げる。ルートヴィヒが宣戦布告を伝える相手を男で充分と見做したならば、男はそれを受け、或いは、提督本人か執政を担う元首への直接の面会を求められたなら、それが叶うようにと取り計らうつもりだった ]