[ 軽く汗を流し、指定の制服へと腕を通す。
シャツのボタンを留め、ネクタイを締めた。
シャツの襟からは、肌に這う黒い刺青が覗く。
全貌は見えないだろうが、タイを緩めボタンをひとつ外せば。
その細く白い首筋に、複雑な模様の入った三日月と五芒星の刺青ひとつ。
先程のTシャツからは、さぞよく見えたことだろう。
とある星の人間は皆、同じ刺青を入れる。
その情報は誰にでも知りえるもの。
しかし、その刺青の "意味" を知っている者は、それほど多くはない。
後ろで一纏めにしていた髪の毛を解く。
ぱらり、太陽のような金糸が、月と星を覆う。
そうして身支度が整えば、常に腕に嵌めている最新型のリストバンドに視線を落とす。]
……もうこんな時間ですか。
[ それは、通信機。
時間を確認したナネッテは、ぽつり呟いて。
リストバンド端末のコールボタンを押した。
きらり、金糸で編まれた古ぼけた印象のミサンガが、リストバンドの隣で揺れる。 ]