[指先で薔薇を触れば過去の記憶。]
『 ――ねェ、……ちゃん。
さっきの、まるで王子様みたいだったね。
[作曲家の妻の名を冠した薔薇は、まだ生み出されてもいない頃の話。
小さい頃は、近所の男の子やお兄さんやお姉さんとここでよく遊んだり隠れんぼをした。
迷路の様な植物園は四季折々の植物が植えられており、その一部は自由に出入りも出来た。]
お姫様を助けてくれるような王子様。』
[思い出すだけで赤面するような幼い記憶。
そんな遥か彼方の記憶は、稚気染みたおままごと。
今はもう、小さい頃の友達なんて遠くなってしまっている。
中学や高校にあがれば、尚のこと。]