[そのままウェントゥスの里で看護を受け、死の淵から復帰したカナンに任務を思い出させたのは、距離を越えて届く腹心の”声”だった。
思えばシメオンはいつだって過去を手放さずにカナンに呼びかけてくれたのだ。最初の時から。]
ありがとう、世話になった。
おれは、カナン・リリ。
北の小国セドナの皇子にして、マチュザレム共和国の外交官だ。
ナミュールとマチュザレムの国交について話をしたい。
話のわかる有力者に取り次いでもらえまいか。
[そうしてまつろわぬ民のはみだしっ子が引き合わせた”話のわかる相手”が、王府の人間でなく学館の人間だったことは、この国の未来を幾ばくか方向付けることになったかもしれない。**]