[ 徒手攻防技法を主とする柔術。
彼女の生い立ち故に、自然と学び身に付いた技。
とはいえ、反復を重ねなければ身体は鈍り、技は錆付く。
そのため、彼女は時間を見つけては、自主鍛錬に励む日々であった。
その日課は、厳重な警備体制と、漂うどこかぴりりとした空気の中でも変わることはなく。
詳しくは知らないが、眉唾物の兵器を運ぶ以上仕方のないこと。
しかし、煩わしいと思わなくもない。
操縦士などという、コックピットへと籠りがちな仕事故、鈍った身体と張りつめた精神を解きほぐすには最適であったが。
やはり肉体派の部署が多く、畑違いは重々認識していた。]
…………ありがとうございました。
[ 様々な感情を孕みながら、ぶすぶすと突き刺さる視線。
それは彼女の容姿に起因したものを含まれるため、もはや慣れっこ。
勝負のため、詰めていた息を、ふ、と緩めて。
投げ飛ばした相手に手を差し出し助け起こす。
向き合って締めの一礼をして。二、三言感想を言い合えば。
内心で小さくため息を吐きつつ、鍛錬場を後にした。 ]