[窓の外は一面白に染まっている。まるで此処には最初から他の色など存在しなかったかのように。
たまたま通りかかった際に温泉の評判を耳にして、怪我に効くなら療養しようと立ち寄ることを決めた。自分にとって白銀の村を知ったきっかけは、ほんの偶然に過ぎなかった。
あのとき、戦線離脱せざるを得ないような怪我をしなかったら。そして、白銀の村に住む樵から村の話を聞かなかったら。おそらくその名を知ることすらなく一生を終えただろう。
そのときの経緯や、幼い頃過ごした村については、包み隠さず友人のジムゾンには話をしてある。けれどもその反面、戦場に関することは全く喋ったことがなかった。
だから、ジムゾンの過去にも言及してない。誰しも沈黙を守りたいことはあると思っている。
そして、”大切な人をなくした。”>>22との言葉には。]
俺は戦場に出ると決めたときから、大切な人を作ることを止めたけれど。少なくとも、ジムゾンの気持ちを全く想像できない訳じゃない。
[とだけ答えた。]