[ やがて覚書を丸めて懐に入れると、男は天幕を出た。 ]
斥候に出た小隊の隊長に、宴の後にでも、私の元へ来るよう伝えろ。
[ 天幕の外で見張りをしていた兵に、伝令を命じ、そのまま野営地を横切る。
男の歩みは、急いては見えないのにまるで駆け抜けるかのように速く、気づいて敬礼した兵にも、漏れなく翻ったマントだけが目に残るという有様だ。 ]
フェリクス?
[ その歩みが緩んだのは、どうやら若年兵の訓練中らしきフェリクスと、彼に声をかけたカナンの姿が目に止まった時>>29 ]
.........
[ 視線が迷うように彷徨ったのは、ほんの数刻。次の瞬間には二人から視線を逸らして再び野営地をすり抜けるように歩み出す。
向かうのは食料を備蓄管理している天幕の一つ。 ]