― 竜郷・山上の館 ―
[どれ程深い溜息をついた所で、退屈な時間は変わらない。
竜郷という限られた世界の中では不便すら楽しみの内。
人の身を好んで用いているのも、竜身よりも不便だからが大きいが。
過去、何度かの交流で人界そのものが面白いと認識があった故]
…そういえば。
あれに喚ばれるのも、新月であったかの。
[退屈の中でもあの感覚を薄れさせぬよう、との意識が少なからずあって。
独り言ちたのは、彼らとの交流の機会について]
途絶えてはおらぬじゃろうが、暫く喚ばれてはおら…
[おらぬな、と。
呟くつもりだった言の葉は、唐突なそれに遮られた]