ローレル。一つだけ、君は思い違いをしている。
私はもう、この国そのものなのだから。
……だから。何が変わろうとも、これが変わることはない。
私の望みは前と変わりはしない。
…この国の民を守ることばかりだ。
[そう彼女に告げる背に、おずおずともう一つの声が掛かった。
それは最後の不幸を知らせる声。ヘルムート・ハイドリヒ・シュナウザー監査局長の死の知らせに、ウェルシュは悼むように一度瞳を閉ざした。
薄く開いた唇から落ちる音はない。
もう絶望は呑み尽くした。底の抜けた哀しみの上、もう一つまた重い嘆きが心を押し殺してゆくばかりだ。]