[ 北から来て、神前試合が行われている事情を知らない者たちには、王国旗艦がゼファー兵に乗り込まれているように見えたのは容易に察せた。
果敢に突っ込んでくる船を止めようと手を振り回す兵らの動きが却って混乱を助長している。
ギデオンは赤髪を掻き上げて、足を止めたバルタに視線を戻した。
これだけの敵兵に囲まれても平然としている彼に、目を細める。]
ああ、話が早くて助かる。
このまま続けるべきではないな。
すまないが、いったん預かってもらえないか。
[ 神像の前でするように、わずかに膝を曲げて礼をした。
人垣に道をあけよと命じるまでもないだろう。
月の面を叢雲が過り、ひとときの暗幕を引く。*]