[左胸に見えた名残は、当然のように人間のもの。
薬師の大切な薬草を潰えさせる雪のような、その冷静さを思わせるような清浄で冷えた色。
また人間が死んだ。
人狼は、生きているのに。
何も言わず、少しの間布に隠された彼を見ていた。
ごめんなさいヨアヒム。
あなたが嫌いだったわけじゃないわ
わたし、涙がもう残っていないの。]
皆を呼んでくるよ。
[第一発見者と、真っ先にやって来たディーターへそう言ってから離れた。
多分、多くは声を聞いただろうし
そうしている間にも誰か来ていたかもしれないけれど。
もし、出てくる気配が無い部屋があれば
ノックして、声を掛けるだろう。「ヨアヒムが死んだ」と。]