[気力、そんな言葉を投げたのはつい程だった筈なのに、もう遠い昔のことのように感ずる。今はもう、この身体も意志で突き動かして。ジャラ、と意味も無くポケットの鍵は音を立て。]
…君も。先程ぶり、だね。
[言葉の先には斃れたシュテラが骸を晒し。眠るように、なんてとても表せない姿で、それでも眠っている。瞼は閉ざされているだろうか、どちらにしてもその視界を覆うように一度、手を添えて。]
親愛なる君へ。さぁ―
[バサリ、と宙を舞うのは幾枚かの紙切れと写真と。それは彼女が求めた者の在りし日の姿。眩く光る、過去の日々。本当は、君の手に渡してあげるべきだったね、と語り掛けるように。]
…俺と同じように、この国から奪われてこの道を採った君に、少し思い入れすぎたかもしれないね。
[苦笑する。彼女は復讐を選び、自分は棄てる事を選んだけれど。それでも同じものを恨み憎しみを抱いた点で俺達は似ている。だから。]
求めた掌のその先の、
[眠る彼女にそう囁いて。]