[入口を潜る前に一度後ろを振り返り、すまないと口だけで紡ぐ。カシムの遺体は変わらずに其処にあった。冷たい床に転がった彼を回収してやる事は男には出来ない。辿り着いた瞬間、曹長が倒れ伏したのにつられて男もよろけ、甲板に膝をつく。]…っ、曹長…![彼の名前を呼んだが、反応はあっただろうか。]――すまない。助けに来てくれたのに。[呻くようにそう言って唇を噛みしめる男は、血を拭う事もせずにブルーム曹長に添っていた。**]