― 夕時・廊下 ―
[夕食を終えてさほど時間は経っていないはずなのに
食べ足りなさを感じていた。
実務隊でないから必要以上の摂食は控えるべきと分かっている。
茶で紛らわせようと倉庫で茶葉を分けてもらい戻る途中
ばたばたと廊下を荒い足音が近づいてきた。
どうやら夜間訓練の途中に足を滑らせて怪我をしたらしい。
二人に両脇を固められ連れていかれる兵の頭には
白い布が当てられていた。
頭部の出血は怪我の大きさに寄らず派手だ。
含み切れない分が米神から顎を伝って襟口を染めている。]
―― あんなに流して、もったいない。
[人気のない廊下に、拾われない呟きを落とす。
一瞬の擦れ違いにも関わらず
白に滲んだ赤は、鮮やかに網膜に焼き付いていた。*]