[眼下に視線を移せば、そこには人間がまた一人。>>30
これにて、魔界で見かけた人間は二人目。
ふむ、と顎先に指を添えて逡巡するが、これもまた無防備な青年。
自身の愛妻も詰めの甘いところはあるが、
彼らを目の当たりにすれば当然危機感が沸く。]
――――?
[されど、探索しようと気を張り詰めた瞬間、
己の意識を爪弾く光が流星のように流れる刹那。>>33]
イングリッド…?
[妻の名を呟くと、顔を上げ、周囲に視線を巡らせる。
決して気のせいではない一条の気配。
時間にして一秒もなかったが、近い気配に僅か凪いだ。]