[ 古いものの修繕もおろそかにはしなかったとはいえ、父の業績で人目につくのは、やはりそういった新しもの好きな路線であった。
家臣のうちには、「建国の功臣を先祖に持ちながら伝統の破壊者となっている」と嘆く声もあったが、領地経営という面では一定の効果をあげていたのは認められていい。
常に土木工事を行なっているから人も物も出入りが多く、経済が回れば街は賑やかになった。
領地で腕をみがいた職人の何人かは技術指導者としてこの遠征にも同行している。
父は、「職人が戦場に行くなんて」と、もったいなさそうな顔をしていたが、立候補であるからには止めだてはしなかった。
冒険好きな性格は海洋貿易で発展してきたマルール人の血筋ともいえるのだ。 ]