[……呼びかけてみたものの返事がない。ただのしかばねでもないようだ。
さて、アプローチを誤ったようだが、ここからどう挽回すべきか。封印を解く方法もわからない以上、殺してしまうのはもってのほか、臍を曲げられても困るのだ。
じぃっと見つめ続ける時点で相当失礼なことなんて、吾は気づけはしないから。視線を途切れさせることはない]
──…ん?
[それ故に。それ故に気づいてしまった違和感を、今はうまく飲み込むことができなくて]
んんん?
[良く言えば中性的、悪く言えば男に間違えられそうな、その顔立ちは見間違える筈もない。
しかし、記憶の中の女に比べ硬そうに見えるのはなぜだろう? 服装のせいだろうか?
隣に立てば、当時もそれなりに高かった背も、更に伸びているようなのだが。 この世界の人種の成長期はいつまでだっただろうか?
そして声だ。もともと落ち着きのある低めの声であったのだが、さらに低くなってはいないか? 喉に病でも抱えたか?]