[“男性”が大きな花束を買い求めると、目立ってしまうかもしれないから。仕事帰りに、いつも一輪だけをそっと求める。すっかり常連客の一人のようになりながらも、売上的には上客とは言えないだろうのが、申し訳ないが。花屋としては高すぎるような階級バッジを、不思議に思いつつも。芳醇な花々の香りの中で、彼女に話し掛ける仕事帰りの一時は、常に気を張っている任務の中で、ほんの僅か肩の力を抜ける時間だった。]