[少し近づいてみると、階級章からどうやら主計少尉のようだ。
まあ、主計科はさっきまで激務だったようだから、疲れが出てつい眠ってしまったのかもしれない。
頭を短時間にフル回転させるとどうしても眠くなってくるもの。
気持ちはよーく分かるよ、などと考えていて――
――そうだ、いいこと思いついた。
とばかりに自分の右の内ポケットに手を伸ばす。]
私からお仕事疲れの少尉くんにプレゼント。
頭が疲れた時にはやっぱり甘いモノだよねー。
[ポケットから出したのは大好きな飴玉。それもとっておきの甘いやつである。
普段から自分が仕事に疲れた時の為にポケットには大量の飴玉や小さいチョコレートを入れていた。
それをこの居眠りさんの前に一つ置くと、そのまま食堂から出て行った。
小さな善行ことをした後は気持ちが良いねえ、と不思議な満足感を覚えつつ、船室へ向かうその足取りはやはり目的地とは逆方向。
――そして、食堂に行った理由を忘れていたことに気づくのは、もっと後になってからである。]