Fiat nox.
[ 唱えた言霊によって、男の身を侵していた闇の瘴気と魔印が活性化する ]
ガ、グ...オォオオオッ!
[ 咆哮か悲鳴か、その両方か、叫びが男の口から迸り、闇がその手の内に集まっていく。それはやがて、先端に闇色の炎を燃え上がらせた一本の長い棒状の姿を取った ]
オォォッ!
[ 引き裂かれた傷から溢れる血が天地の無い空間を駆ける男の軌跡に添って紅色の筋を引く。槍を揮うように手にした闇を揮えば、天使を封じていた光の繭も、繋いでいた天青色の縛めも、共に引き裂かれ、引きちぎられて消滅していった。
同時に聖なるものの極みたる天使の血に触れた闇も、形を保てず拡散して元の瘴気に戻り、二人の周囲に漂い揺れる]