[まさか女性があれほど残虐なことはできますまい、という目撃者である兵の言葉に、カスパルは目を細める。
穏やかな駐屯地は今、疑心を持ち出している。
人が人を疑うのは容易い。
カスパルはそれをよく知っていた、知っている。]
一度発症すれば人外の力を得る。
男女や体格など関係ない。
女性のほうが少将は油断されたかもしれないぞ。
特に、新米ならば、な。
[雑談のように落とす言葉は、意図的に選ばれたもの。
カスパルの周囲にいた兵士たちは期待通りにざわめいた。
夜分に出歩いていた女性が誰かは知らないが、疑心を持っている人に対しては、疑うきっかけを与えてやればいい。
「新米の」「女性」――ただの雑談、ただの想像だ。
それでも投げられた小石は思考に小波をたて影響を残すだろう。*]