[下士官の指導状況や他の兵士の話題を振られ、会話を打ち切りたくなりつつも、極力彼の話に会わせて相槌を打つ。]
…月見、ですか。
さすが少将殿。風情をたしなまれる余裕もあるとは。
生憎と無教養なものでして。
少将殿の様であれる軍人はまずいない事でしょう。
[一応駐屯地の責任者が、夜間に一人で外に出たり、窓を開けて酒を飲みつつ海に浮かぶ月を眺めるとは、ここをリゾート地かなにかと勘違いしているらしい。
ずいぶんな平和ボケで、と言いかけた言葉を飲み込んでにこりと笑んだ。]
良い酒がありましたら紹介させていただきます。
それでは後に正式な報告書を。
本日は楽しいお話をありがとうございました。
―――失礼いたします。
[踵を付け指先までピシリと整った敬礼をして、カスパルはローゼンハイム少将の部屋を辞した。*]