[岩張りの浴槽に背を委ねて空を仰ぐ。空の下で湯浴みするのも、悪くはなかった。パシャリ、水音を響かせ両腕を持ち上げる。眠るときには矢張り、誰かの熱を傍に感じていたい。お陰で、狭い場所だったけれど熟睡できた気が、していた。あれがマレンマだったら以前のように組み敷かれ拒絶とも警戒とも知れぬ気配を呈してくるのだろう。あの時は結局根負けして、せめて傍で眠らせてくれとその場を離れず眠ったかもしれない。翌日、野菜の収穫で対価を支払ったのも良い思い出だ。思い出して小さく、水面を揺らした*]