― 少し前/セミヨン川南岸 ―
はい。
[ 「ロシェ」と呼んだ隣国の将の声に>>9男は素直に頷いた。
今、彼をそう呼ぶのは、この人しか居ない。その愛称を最初につけた姉姫も、兄...本来の皇太子であった、クレステッド・アジェンタ・ド・レオヴィルも、もうこの世の人ではないのだ ]
将軍。
[ 馬首を返しながら、金茶の瞳を、兄の親友でもあった相手に向ける ]
先陣は確かに御任せします。ですが、決して無理はなさらぬように。
モンテリーから落ち延びて来た民は、子供や怪我人を除き、殆どが志願兵として砦の守りについてくれています。
彼等にとって、貴方は、唯一の拠り所なんですから。
[ モンテリー王国最後の将にして、恐らくは唯一人の王族の生き残り。その存在は、レオヴィルの皇太子としての自分と同等...或いはそれ以上に、大切なものなのだと ]