ディーク
[ 名を呼ぶと、固く閉ざされていた天使の瞳がゆるりと開いて男を見つめた。未だ意志のいろの見えない、茫洋とした瞳に、男は笑みを浮かべ ]
迎えに来た。
[ 先にも口にした言葉を、再び声にして、己の身体に巻き付いた天青色の血管に紅い血に塗れた手で触れた。
魔の瘴気に侵された血に触れて、ぼろりと天使の血管が崩壊する。
それは天使にも痛みを与えたかもしれないが、男は躊躇いはしなかった ]
少し、我慢しろよ、俺も結構痛い。
[ 彼は、いつも、自分には甘い。だから、自分だけが傷ついたなら、それ以上の無茶をする。ならば最初から、同じだけの痛みを受ける覚悟を持てばいい。同じだけの傷と痛みを分け合うなら、置いていかれることもないだろう。
それが、守護天使を友とし、生死を共にした男の得た結論だった ]