私は真実を隠して生きている身だけれど
いや、隠したというよりは、捨てた……だね。
家名を捨てたのさ。自由になりたくてね。
尤も、躊躇わずに捨てられるくらいの軽さだったけれど。
[あまり、自分の口から身の上を話すことはないのだけれど。向けられる眼差しに、隠し事はしづらくて。]
それが正しかったかどうかは分からない。
でも、捨てたことを後悔はしていないよ。
自分が選んだ道だからね。
[告げる声音に迷いはない。街の隅で朽ちた屋敷に、埃の被った父母の墓碑に。何も思わないではないけれど。己の歩んできた道を、悔やんだことは一度もないから。]