[ 宮廷画家は窮屈な職業だ。
一見すれば華やかにも見えよう。
けれど、
見たものを在るがまま描くことや
聞いたものを絵として描くことは
決して求められていない。
果たして、"画家"として
幸せなのだろうかと
偶に疑問を抱くこともある。
少女を引き取ると言うことは、
つまりは彼女にもまた
その業を背負わせてしまうことに
繋がるのではないだろうかと
悩まなかったと言えば嘘になる。
…だけれど。
孤児のまま
誰に引き取られるでもなく生きていったとして
少女の才が活かされる日が来るのかと
考えれば――"ない"と、断言できてしまう。
それならばいっそ、
いつか彼女自身の見聞きし
感じたものを描けるよう
技術だけでも力を添えてやるくらいは。……と。 ]