[疑い深く偏屈で癇癪持ちのスコット‐ダンカンは、
近侍する立場としては難のある人物だったが、
彼の生み出す音楽は、どれも圧倒的に素晴らしく。
いつだったか、ピアノの練習中にその口癖を聞いた...は、]
ならば、私にも魂があるという証拠になりますね。
ダンカン様の音楽に感動していますから。
[黒いサングラスで見えない目を隠したスコット‐ダンカンは
ふいっと顔を背け、
「そのフレーズを弾けるようになってから言え!」
と早口で...を叱った。
後から考えると、照れたのかもしれない。
...が世辞を言わない――言えないことを、彼もあのころには
気づいていただろうから。]**