―仮想現実のその後で・生死の境を彷徨いながら―
[たくさんの本を翻訳してきたけれど。
恋愛小説や詩集の翻訳だけは大嫌いだった。
わたしは、生まれたときからこの姿で。
活動を停止する時も変わらぬ姿だと、言われてきた。
こんななりで、いったい誰に本気で好いてもらえるだろうと思っていた。
砂糖を吐くくらい甘い甘い恋の詩なんて、所詮他人事。
そう、思っていた。]
…カーク。
[いちばんだいじなひとのなまえ。
明るい茶色の髪も、淡い色の瞳も、少しひょろりとした体躯も、だいすきだった。ううん、今でも好き。
こんな姿じゃなければ、とっくの昔に思いの丈を伝えてたのに。
…恨むわ、神様。そんなのいるのか知らないけど。]