………何処に、いる。
[腕を伸ばさなかった。
咄嗟に、追いかけようとさえしなかった、あのおさげ姿の少女は、何処に。
先程の光景を思い出せば鬱屈とした心地に舞い戻る。
吐いた息は重苦しい。
誰にも見られていない。
そのことをいいことに、片腕で自分の肩を一度抱いて。]
ッ、!
[だから、耳元で擽るような冷たい吐息には気付けず、現れた吸血鬼の鋭い歯牙から逃れる術などなく。
左手で構えた剣を振り回す。
その際に飛び散った数滴がダンスホールを汚して、沈黙していたホールはさざめき立ち、覗く月が弧を描き嗤う。]**