[>>23聴覚が戻って来て、誰かの声が聞こえるのに気付いた。
それは兄の声ではなく、
カシムの声でもなく、ブルーム曹長の声だった。]
…っ、離せ…!!
[カシムから引き剥がされる時には激しく抵抗をしたので、恐らく更に彼の肩を痛める結果となっただろう。
けれど咳き込んだ隙を突かれてカシムと分かたれ、男は曹長に連れられて階段を登っていく。
脂汗に滲んだ手。
タイを噛みしめる苦しげな彼の顔を見れば、はたと気付いたように抵抗をやめ、甲板に上がるのに協力する。
けれど誰かの死を目の当たりにした衝撃で、男の足は平時のようには動かなかった。]