[尚書官長が文書を広げた時>>3、息を呑まなかった者があるだろうか。間違いなく、ウェルシュは息を呑んだのだ。
意識としてはあった。
自らが選ばれる可能性も、…いや。
父に迷う思いがあるからこそ、長子に跡を継がせるではなく、態々「候補」として並び立てたのではあるまいか。ならば次期国王と指名される可能性は、思いのほか高いのではないかと──…思わぬ、わけではなかったけど。それでも。]
……まことか。
[いざ現実となれば、やはり受け入れるに多少の時間が欲しくなるのも事実だ。低く問えば、尚書官長は恭しく文書を捧げ見せるか。そこにある筆跡、御名玉璽。確かに、父王の遺した書状のように目に映る。
それをひとつひとつ目で追って、ウェルシュはきゅっと口を閉ざした。]