[大荒れの海を見れば、昨日オットーが話していたことを思い出す。
……“人狼”。聞けば、村はそいつに滅ぼされかけたのだという。
人の姿をした狼が居るなどとは信じられないが、しかしながら、同じくらい凶悪な――何か――が、居たのだろう。
自分が大陸から移るきっかけとなった、もう一つの事件を思い出す。
悍ましい傷痕を残し無惨に引き裂かれた、昨日まで仲間だった人間の身体。
野生の動物にも人間にも出来そうにない「それ」に、疑心暗鬼になる仲間たち。
その死体は直ぐに仲間全員で埋めたから、知る者は居ないはずだが。
……あれも、あるいは?
彼らとの結束が固いままであれば、……そんなことを考えかけて、やめた。
しかし……“あれ”と同じことなのかどうか、調べてみる必要はありそうだ。
行くとするならば図書館か……そう考え、図書館に向かおうとする、が。
向かおうとして直ぐに、人影。>>36]
……おい嬢ちゃん、こんな天気の中独りは危ねえだろ……何やってんだ?
[そう、問いかけた]