[>>24 店から漂ってくるパンの匂いは、
昔、村に居た頃の友人のことを思い出させる。
幼い頃はよく一緒に遊んでいたものだが、
9年前、男が村を出るときに、彼は居なかった。
確か――パンの修行のために、街へ出ていたのだったか。
彼は今、何をしているのだろう。
約束を果たせぬまま村を出てしまったから、
すこし、気にかかっていたのだけれど。]
あ、すまない、今………、
[>>23 扉が開く気配に、店の邪魔をしてしまったかと、
尾を引かれつつも立ち去ろうとして。
もう、随分と記憶も薄れてしまった。
しかしどこか聞き覚えのある声に、男は振り向いた。]