[ 少女がそのか細い一本の指と
転がる石や木片で描いたという絵。
荷馬車の隅に残されたそれを見て
無表情な顔の、…瞳の中に在る
激しい感情の一片を感じ取ったからだった。
"絵を描くべきだ"と、思った。
直前に素養の一かけらも無いような
形ばかり出来上がった絵を見たからだろうか。
手ひどく断った娘の名は…
と、その時には名すら忘れていたほど。
―― 衝撃を、受けていた。
小柄な身体の中に在るエネルギーを
余すことなく迸らせたような絵と
それを描いた少女の才能に。
気が付けば、『 名は? 』と尋ねていた。
ローレルと名ばかりの答えが返ったから
養子にならないか、と、声をかけた…。 ]