[中庭での騒動は、既に犯人が失せていたにせよ、人の目の多い出来事であったから、王宮内には程なく第二王子暗殺未遂並びに、王子を庇ってリヒャルト・ラバル尚書官長補佐が死亡したことが伝えられただろう。凶行に及んだのは鷹匠である、とされた。第二王子は彼の名を知らず、彼の通り名など知る由もない諜報者《ソマリ》の名が齎されるのは少し後のこととなる。第一王子の命>>10により王宮内の警備は一段と強化された。人の気配は多い、城門の騒動は鎮められた。それでも再び齎された死の情報に、王宮内の人々の顔にも不安の色が、打ち消せぬ薄雲のように漂っていた。]