[何処か固いようなシモンの声を聞いていれば、青年の瞳は彩度を消失させて、ぱちりと一度瞬きをした。]
――…誰が。……誰が?
……そう、例えば。
『ニコラス』、とか。
[知っていることがあるなら話してもらおうか、と促してみるけれど、声のトーンを上げたのはその場にいる他の誰かにも聞こえるように。]
放置すれば、と言うが、俺は自分が人狼でないことしか識らない。
その上、何匹犬っころが紛れ込んでいるのかもわからねえっていうのに。
[犬っころと痛烈に揶揄る言葉は半ば自分へと向けたものであったけれど、シモンはどう思っただろう。]
手前が死にたくねえだけなら、この村に居る自分以外を殺せばいいんだろうさ。……でもな。俺はそんな事はしたくもねえし、仮に自分が生き残るためとしたって…御免だ。
[目を伏せて吐き捨てるように、嘘を吐いた。]