― 戦場→砦 ―
[ 狼の背に揺られながら、彼の意識は無意識の闇と浅い覚醒の間を揺れ動く ]
『ジークはジークだ!』
[ 示した拒絶に対して、幼馴染みが叫んだのは、過去にも聞いた事のある言葉 ]
『父上の望み通りにしなきゃ駄目だって、みんな言うんだ…でもボクは、嘘をついているみたいで…なんだか苦しい』
[ 父の元に引き取られてしばらくして、なんとか貴族の子弟らしさも身に付いて来た頃、自身の内面と外面の落差に悩んで、ウェルシュに、思わずそう漏らした時のことだ ]
[ いつも通りの、まっすぐな瞳と何の気負いも無い声と笑顔で、でもジークはジークでしょ?と、あっさり言われた ]