[ラメール国、第二王子ウェルシュ。
書を愛する、穏やかな印象の青年である。
幼いころは軽い風邪など患いがちで室内に篭りがちの、線の細い大人しい印象を与える子どもであった。大人になって、ややその印象は薄らいだものの、武より文を好む性質が変わることはなく、剣を握れば平凡、王族の男子の嗜みとして兵略を学ぶも特別に才の有るわけでもなし、代わりに政治や異国についての学びは熱心で、良く楽し気に人の話を聞いた。
文弱の王子と影で謗る声があり、一方で賢君の資質ありよと賞する声も一方にある。どちらにせよ平和な時世では表に出ることもない声であり、第二王子の周辺は未だ平穏のままにあった。]