[北が動いたとなれば、南も黙ってはいないだろう。
劣勢の白狼騎士団へ王都が国軍をさし向ければ、守りが偏る隙をついて王都を制圧することもできよう。それが「侵略」という形でなく、暁の国の求めに応える「救援」という形になったとしても、国力の落ちた国への干渉は避けられないように思える。
さりとて、北の国がおとなしく兵を引くとも思えず。
肥沃な大地と海を擁するこの地を手にするために、国の蓄えを軍事へと注ぎ、周辺諸国に手を伸ばし続けてきたようなものだから。
いずれにせよ、戦火の火蓋は切って落とされた。
長居は無用である、と。旅人の本能が警告している。**]