― かつての話 ―[故国リュゲナー王国が失われたのは、10年も前の話だ。国王に不満を抱いた王弟が隣国の地方領主と手を結び、王宮を攻め落とした。国王は護衛と共に城を脱出したが、王子である自分は別の方向へと逃がされた。リュゲナーの血を絶やすなという言葉が耳に残っている。王の隣には、自分の身代わりに乳兄弟が付き添っていた。それこそ兄弟同然に育った相手だ。父と別れるよりも辛かったが、彼にしか自分の身代わりは務まらないのは確かだった。]