― 月の舞台 ―
[力強さのある足取りはエスコートというには優雅さもないが、あえていうなら歩幅合せるぐらいの気遣いぐらいだっただろう。]
この辺りでいいか。
[他もやりあうようだ。少しでも邪魔にならぬ場所。邪魔させぬ場所にと誘った。
それは他よりも、周囲をみやる余裕があったともいえたかもしれない。
アデルの手を離し、間合いを取って向き合う。
腕も足も届かぬが、一息で詰めれる距離ともいえる]
―――……よし、やるか。
[拳と拳を胸の前で突き合わせる。
シュ〜と音をたてて蒸気があがる。拳から発した熱量が腕へ肩へと伸び、隆起した筋肉が赤く染まった。]