コクーンに限らず、無人医療技術が発達したこの時代では、医者という化石は減る一方だった。
もちろん彼もその化石の一つであり、ただそれだけの理由でここのメディカルケアを担当している。
彼がチェックを入れた書類に視線を送る者がいるわけでもない。
メディカルケアは別に一般乗客と変わりない、それがこの船内の共通認識であり、彼自身も把握している。
何かあればコクーンで検査、そのまま治療。そもそもしっかり管理された船内で身体に異常が出ること自体稀である。
...はぁ。
彼が腰を上げると再びギィと響く。
少し散歩でもしよう。
そう思い、本日何度目かの散歩を試みる。
部屋から出る時、開くドアが何か言った...ような気がした。
このドアもしばらく彼以外を通したことはない。