― 記録保管庫 ―
[前線においては正確かつ迅速な情報伝達が急務とされ
記録の類は常に厳重に管理されていた。
が、国境から近い位置といえ長閑さの体現だろうか。
ここでは随分とそれも緩いようだ。
明日はまず記録を順列に整理するところから開始しようと
雑多に詰め込まれている記録誌を数冊抜き取る。
仕事は明日からだが、今日は他にする事もない。
紙が潮で傷まないようにと配慮された造りの部屋は
思いの他居心地もよさそうだった。
奥の椅子に腰掛けて紙を捲り始める。
朝に感じていた胸の痞えは珍しくも薄れていて、
これも環境の変化だろうかと、小さく唇を綻ばせていた。]