[男の姿は、本来の貴族の当主としての身分に適ったものではなく、一見したところ、商家の主人か、隠居といった身軽なものだ。やじうまめいた民衆に紛れて壇上を仰ぐ姿をジェフロイが認めたかどうかは判らない]『頭領《かしら》』[同じように、商人風の身なりをした壮年の男が、そっと男の傍に寄って耳打ちする]頭領《かしら》じゃない、旦那様と呼べ。…どうした?『首都から鳩が来ました。巫女姫がこちらに向かってるそうです』巫女姫が?それはまた…[男の唇がにやりと弧を描く]